顕微鏡的多発血管炎

概要

顕微鏡的多発血管炎とは、全身に分布する血管の中でも、顕微鏡でなければ観察することができないほどの小さな血管に炎症が生じ、様々な症状が引き起こされることになる血管炎を言います。顕微鏡的多発血管炎で障害を受ける臓器としては、腎臓や肺、皮膚、末梢神経などになります。好中球に含まれる物質に対しての自己抗体(抗好中球細胞質抗体: ANCA)が検出されることが多いため、顕微鏡的多発性血管炎はANCA関連血管炎の一つに含まれています。

顕微鏡的多発血管炎は日本において難病指定を受けている病気の一つであり、年間新たに病気にかかる人は全国で1,400名ほどと報告されています。女性がよりかかりやすく、50歳以上の高齢者で見ることが多い病気です。疫学的には、日本人に多い病気であるとされています。

顕微鏡的多発血管炎では、急速な進行から肺出血や腎不全など生命に危険がおよぶ合併症を生じる可能性があります。そのため、早期に診断を行い、充分な治療介入を行うことが必要とされる疾患と言えます。

原因

人の身体には、大動脈といった大きい血管から、毛細血管といった細い血管に至るまで大小さまざまな太さの血管が存在しています。こうした大小さまざまな血管において炎症が生じる病気のことを「血管炎」と呼びます。

血管炎を分類するに際して2012年に改訂された「チャペルヒル分類(CHCC2012)」と呼ばれるものが使用されることがありますが、障害を受ける血管のサイズと傷害される臓器、血管炎の原因を含めて血管炎は分類されます。これらの情報をもとにCHCC2012では、血管炎を7つのカテゴリーに分け、26疾患を規定しています。顕微鏡的多発血管炎とは特に、顕微鏡でしか観察できないほどの小さい血管が障害を受ける病気です。

血管には各種の臓器に栄養を供給し、その機能を維持する役割があります。血管に炎症が起こると、好中球(白血球の一種)をはじめとする炎症細胞が血管壁に浸潤しんじゅん(細胞が血管壁に入り込むこと)して、血管壁の構造が破壊されます。血管炎によって引き起こされた血管の破綻や血管内腔の狭窄・閉塞されます。その血管が栄養供給している臓器に虚血や壊死、出血などをもたらし、全身にさまざまな症状が現れます。

顕微鏡的多発血管炎では、好中球の細胞の中に存在する「ミエロペルオキダーゼ」と呼ばれるタンパク質に対しての自己抗体(抗好中球細胞質抗体; ANCA)が検出されることが多く、自己免疫異常が病気の発症に関連していると考えられています。なお、顕微鏡的多発血管炎は、同じくANCAが病気に関わると考えられる「多発血管炎肉芽腫症」、「好酸球性多発血管炎肉芽腫症」とともに、「ANCA関連血管炎」と呼ばれる疾患概念に含まれています。

症状

顕微鏡的多発血管炎では、全身症状としての発熱や体重減少などをみます。より特異的なものとしては、全身に分布する血管が障害を受けるため、血管障害の影響を受けた臓器に一致した症状が出現することになります。障害を受ける臓器としては、腎臓や肺、皮膚、末梢神経等になります。

とくに、腎臓の糸球体の毛細血管や肺胞を取り囲む毛細血管の壊死性炎症が特徴的で、数週から数カ月で急激に腎臓の働きが悪くなる腎炎や血痰や息切れを起こすことがあります。重症のときは、透析治療が必要になったり、間質性肺炎かんしつせいはいえんという空咳や息切れを起こしたりする場合もあります。

その他、皮膚の症状として紫斑や皮下出血、潰瘍などが見られます。末梢神経障害としては、手足のしびれや筋力低下などの症状も出現します。

引用元:medicalnote 顕微鏡的多発血管炎